「あ、また足を狙われている……。」
かつて私は、妻の実家に行くたびに緊張していました。
そこには、私を見ると吠えかかり、隙あらば足を噛もうとする一匹のチワワがいたからです。
その攻撃性は本物で、義母が私のためにわざわざ「噛みつき防止用の厚手のスリッパ」を用意してくれるほどでした(笑)。
「ああ、私はこの子の家族としては認められていないんだな。」
そんな寂しさと諦めを感じていた私が、昨日、信じられないような時間を過ごしました。
かつての天敵が、私の膝の上で安心して寝息を立てていたのです。
今日は、そんな「無理をしないことで縮まった距離」についてお話しします。
強敵との同居生活と「冷戦」
現在、怪我をした義母をサポートするため、義母と愛犬のチワワが我が家に同居しています。
同居が始まった当初、私はチワワに対して以前から意識していた「不干渉」をより一層心に決めました。
かつては仲良くなろうと必死にアプローチしていましたが、あまりに心を開いてくれないので、私の方から近づくのをやめたのです。
・無理に撫でようとしない。
・目を合わせすぎない。
・生活空間は共有するけれど、互いに干渉しない。
しかし、不思議なことに、私が仲良くなるのを諦めた頃から、チワワも私を噛まなくなっていきました。
だから同居しても調子に乗って距離を縮めないようにしようと決めたのです。
何もしない贅沢な午後
そんな関係に嬉しい変化があったのは、昨日のことでした。
年末の休み、どこにも出かけず家でダラダラと過ごす午後。
子供たちは子供部屋で遊び、妻と義母が談笑している間、私は「お役御免」の自由時間をもらいました。
リビングの椅子で読書を始めると、足元に見慣れた影が寄ってきます。
チワワが私の周りをウロウロし始めました。
トイレに立てばついてくるし、椅子に座れば前足をかけて見上げてきます。
「どうした? 寂しいのか?」
普段なら無視するところですが、そのつぶらな瞳に負け、私は床に座り込みました。
「おいで。」と膝をポンと叩いて合図をすると、彼女は一瞬躊躇してから、前足を私の膝にかけました。
(……もう、噛まない気がする。)
そう直感した私は、彼女をそっと抱き上げ、膝の上に乗せました。
抱き上げても噛まれない。
そんな変化に驚き、感動しながらも、彼女が嫌がらないように平静を装って不干渉を決め込んでいました。
言葉のいらない温もり
膝の上に彼女を乗せて本を読んでいると、いつしか小さな寝息が聞こえてきました。
実は妻の実家でも一度だけ、こうして抱っこできたときがありました。
妻と義母がお出かけ中で、外で工事の音が鳴り響いていたときです。
工事の音が怖かった彼女は恐怖で震えながら、「他に頼る相手がいないから。」と私の膝の上に乗ってきただけでしたが、そのときも、「少しは信頼してくれるようになったんだな。」と嬉しくなったものです。
しかし昨日は工事の音もありませんでした。
いつの間にか、あのときよりさらに距離が縮まっていたことを嬉しく思いました。
(撫でても大丈夫か?)と邪な心が胸をよぎりますが、不干渉の私を信頼してくれた彼女を裏切るわけにもいきません。
私はなるべく動かないように読書を続けました。
少し伸びた毛のふわふわとした感触、小さな体から伝わってくる温もり。
子供たちを抱っこする幸せとはまた違う、静かで穏やかな幸福感がそこにはありました。
「もし家族がいなかったら、ペットと暮らす人生も素敵だったろうな。」
今の自分には選ばなかった別の人生の幸せを、少しだけ疑似体験させてもらっているような、不思議で満ち足りた気持ちになりました。
「単純接触効果」と「唯一無二の距離感」
なぜ、あれほど私を嫌っていた彼女が心を開いたのでしょうか。
思い当たるのは心理学でいう「単純接触効果(ザイアンス効果)」です。
特別なことは何もしていません。
ただ、毎日同じ空間で生活し、攻撃せず、無理強いせず、何度も顔を合わせ続けただけ。
「この人は害がない」と認識される回数が増えるだけで、警戒心は親近感へと変わっていったのだと思います。
ただ、そんな中でも、私たちの関係には一つだけルールがあります。
「抱っこはするけど、決して撫でない。」
抱っこは許してくれても、頭や体を撫でようとするとまだ嫌がる気がするのです。
これは私と彼女にしか分からない、言葉不要の境界線。
家族であっても、他の人間関係であっても、相手との「距離感」はとても大切だと感じます。
・相手が嫌がることはしない。
・自分の愛情を押し付けない。
その尊重があったからこそ、膝の上で眠ってくれる今の信頼関係があるのだと思います。
無理に仲良くなろうとしなくていい。
ただ同じ時間を共有し、相手を尊重して待つこと。
それだけで、氷が溶けるように縮まる距離があるのかもしれません。
今日の小さな一歩
相手のペースを尊重して、ただ一緒にいてみる
仲良くなりたい相手(家族、同僚、ペットも!)に対して、「何をしてあげようか」と考えるのを一度やめてみませんか?
・無理に話しかけない
・相手のテリトリーに入りすぎない
・ただ、機嫌よく同じ空間にいる
「押してダメなら引いてみる」。
今日はあえてアプローチを控えて、相手が近づいてくる余白を作ってみましょう。
このブログでは、このように日常に潜む「ゆるい幸福」を、5つの側面(身体的、キャリア、経済的、人間関係、社会的)から探求しています。
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