毎日同じことの繰り返しで、少しだけ心が疲れていませんか?
「何か面白いことないかな」なんて、つい口癖になってしまっている方もいるかもしれません。
実は昨日、予期せぬトラブルがきっかけで、普段の生活からほんの少しだけ足を踏み外したところ、思いがけず心温まる「幸福」に出会うことができました。
今回は、そんな私の小さな冒険のお話です。
きっかけは突然の「愛車ロス」
我が家の長年の相棒である車。
次の車検を前に事前見積もりをお願いしたところ、想像を絶するほどのダメージが蓄積していることが判明しました。
「このまま乗り続けるのは危険です。」と整備士の方に告げられ、家族の安全を第一に考え、急遽新しい車を探すことになりました。
我が家にとって車は、あくまで「移動するための箱」。
見栄を張るためのデザインや、最新の機能よりも、とにかく安くて、丈夫で、長く乗れることが絶対条件です。
その条件で探し回っていたところ、「これはかなりの掘り出し物では?」という一台を奇跡的に発見しました。
このもはや運命とも言える出会いに、すぐに購入を決めたのでした。
立ちはだかる「どうやって取りに行くか問題」
しかし、ここで一つ問題が。
今乗っている車は、下取りに出すのではなく、より良い条件で買い取ってくれる先に売約済み。
つまり、納車日に今乗っている車を販売店に置いてきて、新しい車に乗って帰ってくるということができないのです。
通常であれば、妻と2人で1台の車で向かい、帰りは2台に分かれてそれぞれが運転して帰ってくるところです。
しかし現在、妻は妊娠中。
片道1時間以上かかる道のりを運転してもらうのは、絶対に避けたい状況でした。
さあ、どうしようか。
考えた末、私が一人で電車と徒歩を乗り継ぎ、新しい車を迎えに行くことに決めたのです。
非日常への入り口「電車の旅」
仕事が終わるとすぐに家を飛び出し、最寄りの駅へと向かいます。
普段はもっぱら車移動の私にとって、電車に乗ること自体が、なんだか特別なイベントのようでした。
「帰宅ラッシュと重なるかもしれない。」という不安もありましたが、田舎の駅から乗り込んだので、余裕で座席に座ることができました。
初めは、ガタンゴトンと心地よい揺れに身を任せ、窓の外を流れる景色をぼんやりと眺めていましたが、正直なところ、見慣れた風景にはすぐに飽きてしまいました。
「そうだ!この電車での体験をブログに書こう!」
そう思い立ち、スマホを取り出してメモを開き、ことの経緯を書き終えました。
その時です。
猛烈な眠気が、まるで津波のように私を襲ってきたのです。
「今週も仕事、頑張ったからなあ……。」
そんな風に自分を労りながら、心地よい揺れと暖房の効いた車内で、私は眠気に抗うことをやめました。
「プシュー!」
ドアの開く音でハッと目を覚まします。
「しまった、乗り過ごしたか!?」と飛び起き、キョロキョロと辺りを見回すと、幸いにも目的の駅まではまだ少しありました。
驚いて飛び起きたものの、短い睡眠のおかげで頭は驚くほどスッキリ。
その時、ふと思ったのです。
車を運転していたら、こんな風に居眠りなんて絶対にできません。
移動中にうたた寝ができるなんて、なんて贅沢なんだろう。
これは、電車だからこそ味わえる【身体的な幸福】だなと、一人静かに満たされた気持ちになりました。
満更でもない「他人の物語」「自分の物語」
身体が少し回復したことで、心にも余裕が生まれたのかもしれません。
私は、スマホに落としていた視線をふと上げてみることにしました。
「他の人たちは、この時間をどう過ごしているんだろう?」
ふと気になって周りを見渡すと、ほとんどの人がスマホの画面に夢中です。
次に多いのが、私と同じように眠っている人。
友人同士で楽しそうにおしゃべりしている若者たちを除けば、ほとんどの人が自分の世界に没入していました。
その光景を俯瞰して眺めていると、なんだか不思議な気持ちになりました。
「まるで、物語の中に迷い込んだみたいだなあ。」
自分ではない誰かの人生という「物語」のワンシーンを、すぐそばで体験しているような、そんな感覚に陥ったのです。
上を向いて口を開け、気持ちよさそうに眠っている男性。
その肩に寄りかかられて、少し困った顔をしている女性。
もしかして、知り合いなのでしょうか。
金髪に金のネックレス、黒い服で揃えた3人組の青年たち。
「ギャハハ!」と豪快に笑っています。
家に帰ったら、案外お母さん想いの優しい子だったりして。
乗り込んできてすぐに、車内から外のホームにいる友達へスマホを向ける女子中学生。
ホームの友達も、必死に車内の彼女を撮っています。
電車が発車すると、ホームの友達は笑顔で電車と並走していました。
これが彼女たちなりの「青春」の1ページなのでしょうか。
車窓の外にも、普段は見過ごしてしまうような小さな物語がありました。
駅のホームの端で電車に向けてスマホを構える50代くらいの女性が3人。
いわゆる「撮り鉄」でしょうか。
撮った写真をお互いに見せ合って、とても楽しそうです。
夕暮れの街中の細い路地で、キャッチボールをする親子の姿。
微笑ましい光景に、「うちの子が大きくなったら、こんな風に一緒に遊べるかな。」なんて、未来を想像して温かい気持ちになりました。
たくさんの人の、たくさんの人生が、私の周りで同時に進んでいる。
そう思うと、「私が生きているこの人生も、誰かから見たら一つの物語のように映っているのかもしれない」と、少しだけ勇気が湧いてきました。
こんなありふれた光景の中でも、「自分が主人公のこの物語も、満更でもないかもな。」と感じることができたのです。
新しい幸福を見つけるための、小さな一歩
無事に新しい車を受け取り、快適なドライブで帰路につきました。
もし、あの時「電車で行くのは面倒だ。」と他の手段を考えていたら。
もし、電車の中でずっとスマホを見ていたら。
私は、移動中に眠れるというささやかな幸福にも、周りの人々の人生が織りなす美しい物語にも、気づくことができなかったでしょう。
今回の電車旅は、体にも心にも嬉しい旅となりました。
日常からほんの少しだけ踏み出すこと。
それは、新しい幸福を見つけるための、とても簡単で、効果的な方法なのかもしれません。
この記事を読んでくださったあなたも、ぜひ試してみませんか?
・いつもの帰り道、一駅前で降りて歩いてみる。
・ランチをいつもと違う公園で食べてみる。
・普段は乗らない路線バスに乗って、知らない景色を眺めてみる。
そんな小さなことで構いません。
いつもの日常に、ほんの少しの「非日常」というスパイスを加えるだけで、世界はもっと面白く、優しく、そして幸福に満ちたものに見えてくるかもしれませんよ。