「早く週末にならないかな……。」
「いっそ、仕事なんて辞めてしまえたら……。」
そんなふうに、迫りくる現実から目をそむけたくなることはありませんか?
私は時短勤務で働く父親ですが、それでも仕事は決して楽ではありません。
責任の重さ、終わらないタスク、人間関係の悩み。
時短勤務でこれなら、もしフルタイムに戻ったら、果たして働き続けられるのだろうか。
そんな漠然とした不安が心にまとわりつく毎日です。
特に木曜日は、心と体の疲れがピークに達します。
昨日も、そんな憂鬱な気持ちを抱えたまま、娘を保育園に迎えに行きました。
心に冷たい雨が降った帰り道
その日は、朝から冷たい雨が降っていました。
私が差す傘の中に、レインコートを着た娘がちょこんと入ります。
いつもなら、他愛もないおしゃべりをしながら、小さな手をぎゅっと握って帰るのが日課です。
でも、その日は違いました。
娘は濡れるのを嫌がってレインコートのフードを両手でぎゅっと押さえており、手が塞がっています。
私が差し出した手は、誰にも握られることなく、所在なげに私の体の横へと戻ってきました。
傘を叩く雨の音だけが、やけに大きく聞こえます。
「そうか、こんなふうに手をつないでくれなくなる日が来るんだな。」
たったそれだけのことなのに、私の心には冷たい風が吹いたような気がしました。
娘はもう4歳。
きっと、こうして親の手を離れて、自分の足でどんどん世界を広げていく日がすぐに来てしまうのでしょう。
「娘がまだ『パパ、遊ぼう!』と言ってくれるうちに仕事を辞めたいな。」
娘が濡れないように傘を少し傾けながら、そんな弱音が胸に広がっていくのを感じていました。
嵐のあとの、温かい光
ジメジメした気持ちを抱えたまま帰宅すると、今度は息子の調子が良くありませんでした。
やっとの思いでご飯を食べさせ、お風呂に入れると、普段より1時間以上も早く「ねむい〜」「だっこ〜」とぐずり始めます。
時計の針は、まだ夜の8時を指したばかり。
しかし、足元にずっと息子がまとわりついていては、皿洗いも洗濯も進みません。妻がお風呂に入っている間に、息子を寝かしつけてしまうことにしました。
「ちょっと弟くんを寝かしつけてくるから、テレビ見て待っててね。」
リビングでアニメを見ていた娘にそう言い残し、私は息子を抱えて寝室へと向かいました。
よほど眠たかったのか、息子は布団に下ろすとすぐに、すーすーと小さな寝息を立て始めました。
あっという間の寝かしつけに少し拍子抜けしながら、私はそっと寝室を出てリビングに戻りました。
その瞬間です。
「パパー!」
リビングのドアを開けた私に、娘が駆け寄って飛びついてきました。
見ると、その目には大粒の涙が浮かび、喉をヒクヒクと震わせています。
「どうしたの? なんで泣いてるの?」
驚いて尋ねる私に、娘はぎゅっと抱きつきながら、しゃくりあげる声でこう言ったのです。
「パパと離れるのが、寂しかったから……。」
私の心を照らしてくれた、娘の涙
その言葉を聞いた瞬間、私の心にはあたたかさだけが広がっていきます。
仕事の疲れも、将来への不安も溶け出し、むしろ活力が湧いてくるようでした。
「そうか、寂しかったんだね。大丈夫だよ。パパはどこにも行かないよ。」
娘を力強く抱き上げると、安心したのか、さらに大粒の涙を流し、私の服でごしごしと拭っています。
服が涙と鼻水でぐしょぐしょになってしまいましたが、そんなことは少しも気になりませんでした。
むしろ、この温かい重みと、私を求める健気な心が愛おしくてたまらないのです。
しばらく抱きしめていると、娘も少し落ち着いたようでした。
その潤んだ瞳を見ながら、「娘が私の手を離れるのは、まだもう少し先になりそうだな。」と、私も安心して、思わず笑みがこぼれました。
「この子達との時間のために、もう少し仕事だけを頑張ろうかな。」とすら思えました。
日常のなかに隠された「幸福」を見つけるヒント
子育ては、大変なことの連続です。
自分の時間はないし、体力は削られ、悩みも尽きません。
でも、子どもがくれる無償の愛は、どんな栄養ドリンクよりも、どんな自己啓発書よりも、私たちの心を元気にしてくれる特効薬なのだと、この夜、私は改めて気づかされました。
特別な出来事がなくても、高価なものを手に入れなくても、幸福はすぐそばにあります。
今回の出来事は、このブログで定義している5つの幸福の、【人間関係の幸福】でした。
そして不思議なことに、この幸福が満たされると、「仕事をもう少し頑張ろう」という【キャリアの幸福】にもつながっていくんですね。
もし、あなたも仕事や日々の生活に少し疲れてしまったら、ぜひ、あなたの大切な人をぎゅっと抱きしめてみてください。
それはお子さんかもしれませんし、パートナーや家族、あるいは大切な友人かもしれません。
そして、普段は照れくさくて言えない「大好きだよ」「いつもありがとう」という気持ちを、言葉にして伝えてみてはいかがでしょうか。
きっと、その温もりと、交わした言葉が、あなたの心をふんわりと温め、明日を生きるための優しい光となってくれるはずです。
私たちの日々は、そんな小さな幸福の瞬間の積み重ねで、もっと豊かになっていくのかもしれません。