「早く!」
「急いで!」
毎朝、何度この言葉を口にしているでしょうか。
もし心当たりがあるなら、それはあなただけではありません。
これは、いつもの私の口癖でした。
私にとって朝は、まるで戦場です。
ご飯を作り、眠たい目をこする子供を起こし、スプーンを口に運び、着替えさせ、歯磨きをさせ、髪を結んで、トイレに促し、ようやく保育園へ送り出す。
息つく暇もなく、気づけばいつも眉間にシワが寄っています。
娘が「テレビが見たい!」と言うたびに、私は決まってこう返すのです。
「保育園の準備が全部終わったらね!」
それは、準備が間に合わなくて結局見せてあげられない、娘にとっては少し意地悪な「お約束」でした。
送り出すだけで疲労困憊。
それなのに、「頑張った!」という達成感はなく、「今日もまた、口うるさく言ってしまった……。」と自己嫌悪に陥る朝の繰り返し。
私と同じように、そんなことを感じている方もいるのではないでしょうか。
しかしこの日、わが家にまるで奇跡のような朝が訪れたのです。
娘に訪れた、突然の「成長」?
その日も、いつもと変わらない朝が始まるはずでした。
食卓に並ぶのは、いつものメニュー。
特別なことは何もありません。
ところが、娘が一人で、しかも驚くほどのスピードでご飯を食べ終えたのです。
いつもは私がスプーンで手伝わないと、なかなか進まないのに。
「今日はどうしたの!?」「すごいね!」「とっても早いね!」
私たち親の、戸惑い混じりの賞賛をよそに、娘のテキパキとした行動は続きます。
私が「次は着替えだよ!」と言う前に、「つぎは、おきがえしなきゃ!」と自分でタンスに向かっていくではありませんか。
本当に、一体どうしたのでしょう。
娘の気まぐれなのか、それともこれが突然の成長というものなのか。
おかげで、家を出る30分も前に、全ての準備が完了してしまいました。
「じゅんびおわったよ!テレビみていい?」
もちろん!と、私はほとんど初めてかもしれない穏やかな気持ちでテレビをつけました。
床に座ってテレビを見る小さな後ろ姿を眺めながら、嬉しい気持ちと、ほんの少しの寂しさが胸をよぎります。
子供の成長とは、親の手が離れていくこと。
もちろん喜ばしいことですが、少しだけ寂しいものですね。
そんなことを考えながら、この穏やかな時間に浸っていました。
キッチンで見つけた「幸せの種」
娘と一緒にテレビを見ながら、溜まっていたお皿を洗っていると、ふと「おかあさんといっしょ」のあるシーンが目に留まりました。
番組の最後に、天井からたくさんの風船が降ってきて、子供たちが夢中になって遊んでいるのです。
「楽しそうだな……。」
今振り返ると、無意識のうちに私はそう考え、体を勝手に動かしていたのだと思います。
キッチンの隅に落ちていた一枚のビニール袋を見つけ、「これは、風船にできそうだな。」と思いました。
私はそれを拾い上げ、ぷーっと息を吹き込んで口をきつく結びました。
そして、テレビに夢中な娘と息子の目の前に、ぽーんと投げてみたのです。
最初に反応したのは、娘でした。
目をキラキラさせ、ビニール袋の風船に駆け寄り、ぽんぽんと弾いて遊び始めます。
初めはそれが何か理解できていなかった息子も、お姉ちゃんの様子を見て、楽しそうなおもちゃだと気づいたようです。
娘が遊んでいる袋を息子が奪い取ろうと引っ張っていたので、喧嘩が始まる前にと、私は急いでもう一つビニール袋を膨らませ、息子の手に握らせました。
娘が楽しそうに袋を投げ、私や妻がそれを優しく弾き返す。
「ナイスキャッチー!」と拍手をすると、娘はえへへと得意げに笑います。
息子は袋を抱きしめたり、口を当てて「あー」と声を出して振動を楽しんだりしています。
二人とも、そしてそれを見ている私も妻も、家中が満面の笑みです。
まさか、あのいつも慌ただしい朝の時間に、こんなにも穏やかで幸福な時間が訪れるなんて、想像もしていませんでした。
この素敵な時間をくれたのは、間違いなく娘の成長です。
こんな時間が増えるのなら、子供の手がかからなくなる寂しさなんて感じる暇もないのかもしれません。
この時、私は強く実感しました。
このブログで定義している【経済的な幸福】を追求することは、ただ資産を増やすためだけじゃない。
こんなにも温かい【人間関係の幸福】に繋がる「時間の余裕」を手に入れるためなのだと。
家族と笑顔で過ごす朝を、毎日手に入れるためにこれからも頑張っていこうと。
時間を作って幸福の種を育てよう
この日の出来事を通して、私は【人間関係の幸福】を充実させる上で、時間の余裕がいかに大切かを痛感しました。
時間が心に余裕を生み、その余裕が、子供の目線に立って一緒に遊ぶという創造性を与えてくれたのです。
「30分の余裕」と「たった一枚のビニール袋」が、私たちの朝をかけがえのない宝物に変えてくれました。
もちろん、毎日こんな奇跡が起きるわけではありません。
時間に追われ、子供を急かしてしまう日もあるでしょう。
でも、この経験は私に大切なことを教えてくれました。
幸せは、日常の中に隠れている小さな種を見つけ、自分で育てるものなのだと。
いきなり朝の時間を30分作ることは難しいかもしれません。
でしたら、まずは5分から始めてみませんか?
・夜、寝る前の5分間、スマホを置いてお子さんと今日あった出来事を話す。
・週末の朝、いつもより15分だけ早く起きて、家族でお散歩に出かける。
・夕飯の支度を少しだけ前倒しして、空いた時間で絵本を一冊読んであげる。
そうやって意図的に作った小さな「時間の余裕」が、あなたの心にも余裕をもたらし、家族との関係をより温かいものにしてくれるはずです。
あなたにとっての「ビニール袋の風船」は、何でしょうか?
ぜひ、日々の暮らしの中に隠れた幸せの種を見つけてみてください。
私も、日々の大変さの中から、家族と笑い合える瞬間を大切に拾い集めていきたいと思います。