「今日の夕飯、何にしよう…」
この、毎日繰り返される悩ましい問いから解放されたくて、私は夕飯の基本メニューを決め、ローテーションすることにしています。
思考や判断の回数を減らし、脳のリソースを他のことに使う。
これは、忙しい毎日を乗り切るための、私なりのライフハックでした。
作る側としては、この上なく「楽」です。
でもある日、ふと気になったんです。
「毎日同じようなご飯で、食べる方はどう思っているんだろう?」
さっそく、妻に聞いてみました。
「夕飯さ、ローテーションにしてるけど、正直なところ飽きる?」
妻は少し言葉を選びながら、こう答えてくれました。
「飽きるっていうか、ありがたみは薄れてるかもね。揚げ物とか、たまにしかやらなかったから、その大変さも相まって嬉しさがあったけど、ローテーションに入ったらそれが薄れてきてる感じ?」
妻の言葉に、ハッとさせられました。
我が家の食事は「作業」になっていた!?
言われてみれば、我が家の食事はいつの間にか「エンタメ」から「作業」に変わっていたのかもしれません。
以前は、新しいレシピに挑戦したり、冷蔵庫にあるもので創作料理を考えたりする「料理の楽しさ」がありました。
もちろん、たまに盛大に失敗することもありましたが(笑)。
でも最近は、決まった手順をこなすだけ。
味も知っているから、食卓に並べても「わぁ、おいしそう!」という感動はなく、「いつもどおりおいしいね。」という安定した感想。
もちろん、「家族で食べる楽しさ」は何物にも代えがたい大切な時間です。
でも、食事そのものに対する期待や喜び、ワクワク感も、同じくらい大切にすべきだったのかもしれない。
もしかしたら、新メニューや創作料理に失敗することがあったからこそ、成功したときのおいしさや喜びが際立っていたのかも。
失敗にも価値があったんだなと、今更ながらに気づいたのです。
「いつも」から外れてみた
そこで、今日は意図してローテーションから外れてみることにしました。
本来の献立は「鶏カツ」。
でも、鶏肉を使うという点だけ守って、まったく違うものを作ることに決めたのです。
選んだのは「鶏肉のさっぱり煮」。
ポン酢と水で煮るだけなので、実はとても簡単です。
普段なら、和風の主菜に合わせて副菜や汁物を考えますが、今日はそこも解放!
「まあ、今日はそういう日だから!」と自分を奮い立たせ、自由に作ることにしました。
汁物: 我が家の畑でとれた空芯菜とカボチャで、「洋風かぼちゃスープ」
副菜: こちらも畑でとれたきゅうりに、もやし、わかめを和えて、「冷やし中華の具」だけを作成。千切りの薄焼きたまごも添えて。
和風のさっぱり煮と、洋風のスープ、そして中華風の具。
食卓の上は、まさに多国籍です。
「娘は食べないだろうけど、妻は喜ぶかな?」
「冷やし中華の具、どうやって食べてもらおう?」
そんなことを考えながらキッチンに立つ時間は、本当に久しぶりのワクワクする感覚でした。
そして、思いつきで「冷やし中華の具を冷奴にかける」という斬新な(?)食べ方を提案。
さらに、それが不評だったときのために「えのき入りカリカリチーズ」も用意しましたが、こちらは見事に焦がしてしまいました笑
そんなこんなで、多国籍なチグハグ感も、焦がしてしまった失敗も楽しみながら作ることができました。
失敗だって食卓のエンターテイメント
迎えた夕食の時間。
食卓に並んだカオスな料理たちを見て、娘は「これ何?」と普段とは違うメニューに興味津々です。
「とりあえず食べてみたら?」と素直に答えない私と、それに頷く素直な娘。
鶏肉のさっぱり煮を食べて「うーん!」と満足げ。
かぼちゃのスープを飲んで、「じゃがいもみたいでおいし〜。」
えのき入りカリカリチーズは「苦くてまずい」と正直な感想。
冷やし中華の具は食べず笑
2勝2敗でなんとか引き分けでしたが、いつもより完食するのが早かったような気がします。
一方、妻はというと、娘とは対照的に「冷やし中華の具」をモリモリと食べています。
私が提案した「冷奴 on the 具」は、「別々に食べた方が美味しい。」と一蹴されましたが、そんなことはどうでもいいくらい、その食べっぷりが嬉しかったです。
大きめのサラダボウルに作ったのに、7割ほどは妻が食べたのではないでしょうか。
感想は聞かなくてもわかりました笑
食べ終わったあと、妻がこう言ってくれました。
「今日の夕飯、さっぱりしてて美味しかった。気づかなかったけど、いつもの食事って、けっこう油が多かったんだね。」
なんと、今後のメニュー改善につながるヒントまでもらえました。
普段と違うことをすると得られるものが多いですね。
「楽」から「楽しい」へ。幸福はルーティンの外側にもあった
作っている最中の、「みんなはどんな反応をするかな?」というワクワク。
食卓での、家族の新鮮な反応。
「おいしい」という言葉や、喜んで食べてくれる姿。
そのすべてが、作り手である私にとって最高のご褒美でした。
私自身も、普段とは違う新鮮さでいつもより箸が進み、鍋いっぱいに作ったさっぱり煮を、家族が食べ終わったあとも一人でせっせと食べてしまいました。
献立のローテーションは、確かに「楽」です。
でも、そこから一歩踏み出した今日の夕食は、心から「楽しい」ものでした。
今回の挑戦で一番の収穫は、食卓での会話がいつもより弾んだことかもしれません。
「これ何?」「こっちは好き!」「次はこうしてみたら?」そんな一言一言が、食事をただの栄養補給ではない、コミュニケーションの時間なのだと改めて教えてくれました。
効率化や時短は、時間や心の余裕を生むために行うもの。
その生まれた余裕を使って、時には非効率でワクワクすることに挑戦する。
そうすることで、日常はもっと豊かになるのかもしれません。
私が「楽」と交換していたのは、単なる「食の楽しみ」だけではなく、家族の新しい表情や、そこから生まれる対話のきっかけだったのでしょうね。
あなたも「いつもの」から、一品だけ外れてみませんか?
もし、あなたが毎日の家事や仕事に「作業感」を覚えているなら、ほんの少しだけ「いつも」から外れてみることをお勧めします。
・まずは一品だけ、いつもと違う味付けにしてみる。
・スーパーで、使ったことのない野菜を手に取ってみる。
・週末だけ、家族からメニューをリクエストしてもらう。
失敗したっていいんです。
我が家のカリカリチーズのように笑
その小さな挑戦が、あなたの日常に新しい風を吹き込み、忘れていた「楽しさ」や、大切な人との新しい関係性を運んできてくれるかもしれませんよ。