大切な人が心の底から悲しんでいるとき、あなたは「大丈夫、任せて」と、迷いなくその背中を押してあげられるでしょうか?
妻の実家で過ごした楽しいお盆休みが終わり、自宅に戻ってきた矢先のことでした。
妻に届いた一件のLINEが、我が家の平穏な空気を一変させたのです。
突然の知らせと、妻の涙
「ワンちゃんの体調が、良くないみたい……。」
LINEの相手は、妻のお母さんでした。
私たちが帰宅した直後の散歩で、愛犬が突然嘔吐してしまったとのこと。
その後、夕飯も食べずにぐったりしていると聞き、私の胸にも不安がよぎりました。
妻の実家のワンちゃんは小型犬で、もうかなりの高齢です。
私たちの長期滞在や、元気すぎる2人の子供たちの騒がしさが、大きなストレスになってしまったのかもしれない。
そう思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
私がこれほど不安なのですから、長年連れ添った家族である妻の心痛は、計り知れないものだったでしょう。
食卓についていても、その表情はこわばり、心ここにあらずといった様子でした。
その後、妻がお風呂へ向かったので、子供たちが邪魔をしないように子供部屋で一緒に遊び始めました。
遊んでいると時刻は夜9時近くに。
子供たちの歯磨きのためにリビングへ戻ると、そこにいた妻の姿に、私は息を呑みました。
目にいっぱいの涙を溜め、まるで助けを求めるように、私の顔をじっと見つめていたのです。
「ママと一緒がいい!」娘の涙に揺れる父
正直なところ、今すぐ私がワンちゃんにしてあげられることは何もありません。
できることがあるとすれば、ただ一つ。
「そんなに心配なら、行ってくれば?こっちのことは何とでもなるよ。」
そう言って妻を実家へ送り出してやることでした。
「でも、1人で2人の面倒を見るのは大変だよ。本当に大丈夫?」
妻は何度もためらいました。
しかし、これは「もしかしたら、もう会えなくなるかもしれない」という局面です。
後悔だけはしてほしくない。
私は「絶対に行ったほうが良い」と、彼女の背中を強く押しました。
妻が決心して準備を始めると、歯磨きを終えた上の子が、敏感に空気を察して尋ねます。
「ママ、どこいくの?」
ここで正直に話せば、娘が「自分も行きたい!」と大泣きすることは目に見えていました。
それでも、嘘でごまかして後で悲しませるよりはずっといい。
私は正直に伝えました。
「ママね、ワンちゃんの具合が悪いみたいだから、これからおばあちゃんのおうちに行くんだよ。」
案の定、娘は「わたしも行きたいー!」と大号泣。
娘の泣きじゃくる顔と、それを見てさらに辛そうにする妻の表情。
「今、家族のためにやるべきことは一つだ」と心を鬼にして、私は娘を強く抱きしめて寝室へと向かいました。
育児経験がくれた「自信」という名の贈り物
妻が出かけた後も、娘の涙は止まりません。
まずは下の子から寝かしつけようと、隣で体をトントンしていると、こちらはすぐに安らかな寝息を立て始めました。
このときばかりは状況を理解できていない息子に感謝です。
続いて、少し落ち着きを取り戻した娘に添い寝しながら、私は静かに考えを巡らせます。
「明日は、人生で初めてのワンオペ育児。しかも、いきなり2人同時か。」
正直、不安がゼロではありません。
私は1年間の育休を取得しましたが、その間も妻がいたため、完全に1人で2人の面倒を見るのは初めての挑戦です。
しかし、不思議なことに、その不安を上回る感情がありました。
「何とかなる」という、確かな自信です。
なぜ、ためらいもなく妻に「行ってきな」と言えたのだろう。
それは紛れもなく、娘が生まれてからのこの4年間と、特に濃密だった1年間の育休の成果なのだと思います。
初めて父親になったばかりの頃の自分と比べたら、大きな成長です。
子供たちの食事、遊び、寝かしつけ。
一通りの流れを体で覚えているからこそ、「大丈夫、やれる」と心から思えたのです。
妻を、彼女が一番行きたがっている場所へ行かせてあげられたという安堵。
そして、この子たちとなら、どんな状況も乗り越えられるという自信。
この家族のために貢献できたという自己満足かもしれない達成感と、子供たちとの間に確かにある信頼関係。
今回はそんな【人間関係の幸福】を感じ、いつもより添い寝の密着度が上がってしまいました。
「大変」は、未来の幸福への前払い
すすり泣きながら、ようやく眠りについた娘。
普段ならとっくに寝ているはずの深夜に目を覚まし、現在、私のブログ執筆を妨害している息子(笑)
2人とも、ママがいないことで不安定になっているのでしょう。
それなのに、私は不思議と、明日が来るのが楽しみになっているのです。
これまで子供たちと真剣に向き合い、良い関係を築いてこられた過去の自分に、心から感謝したい気持ちです。
(もちろん、明日になったら疲れ果てて「ワンオペなんてもう二度としない!」と叫んでいる可能性も大いにありますが笑)
などと、格好つけたことを書いているそばから、暑がりでエアコンは22℃設定でないと寝付けないはずの息子が、今は鼻水を垂らしています。
楽しみだったはずの明日が、少しだけ不安になってきました笑
皆さんも、不安なときや大変なときに、ふと子供の存在に助けられたと感じることはありませんか?
それはきっと、これまで皆さんが子供たちと一生懸命に築いてきた【人間関係の幸福】が、「後払い」という形で返ってきている瞬間なのかもしれません。
今、目の前の育児がどんなに大変でも、それは未来のあなたが「ああ、幸せだな」と感じるための、大切な投資となっていることでしょう。
そのかけがえのない幸福に気づけるように、今のうちから幸福のセンサーを一緒に研ぎ澄ましていきませんか?
難しく考える必要はありません。
・寝る前に、今日子供が見せてくれた可愛い表情を一つ思い出す。
・パートナーに「いつもありがとう」と、一言だけ伝えてみる。
・自分のために、5分だけ好きな飲み物を飲んでホッとする時間を作る。
どこにでも転がっていそうな、そんな幸せからで大丈夫。
このブログでは、 日々の喧騒の中に埋もれてしまいがちな「幸せのかけら」を、一つひとつ丁寧に拾い集めていくことを大切にしています。
皆さんの幸せセンサーを研ぎ澄ます一助になれば嬉しいです。
まずは一つだけ、今日の幸せついて振り返るところから始めてみませんか?
それが、ゆるく、でも確かに幸福を追求していくための、大きな一歩になるはずです。